9.22.2015

[Event]あなたにとって、Zineとは?:Tokyo Art Book Fair

9/19〜21で開催されていた東京アートブックフェアに行ってきた。ケーブルTVのひとに「あなたにとってZineとは何か、取材させてくれませんか」と言われたけれど断ってしまって、でも良い機会なので少し考えてみようと思う。

まず、Zineとは何か?

”英語で「有志の人が制作する、たいていの場合は少部数の、非商業的な(利益を出すことが第一の目的ではない)出版物」のこと。
ミニコミ・同人誌。
元々はアーティストが作品をコピー機で印刷して作っていたもの。
単純にマガジン(雑誌)の略語として使用される場合もある。”

調べると、Zineはこのように説明されていることが多くて、これが一般的に「定義」とされているもの。近年では「ブログを冊子にしたようなもの」と説明されることも多い。でも、実際のところ定義ほとんどなくて、絵であったり詩であったりエッセイであったり内容はさまざま、冊子になっていない形態をしているものもたくさんだ。

Zineに関する唯一の学術研究書の著者スティーヴン・ダンカムは「みすぼらしい、自家製のパンフレット、変わり者のわめきでいっぱいの、ぐちゃぐちゃのデザインの爆発する小出版」と述べている。”変わり者のわめきでいっぱい”であるかどうかは定かでないが、Zineはほとんどの場合、商業シーンや企業とはほとんど関係を持たない場で流通される。広告が入っていることなどほとんどないし、印刷会社に依頼して製本してもらうこともあるが、コピー本を量産して販売している作家もまだまだとても多い。IllustratorやInDesignを駆使してプロ顔負けの作品を発表するひともいれば、手書きの日記にステッカーを貼っただけのようなDIY精神溢れるものもある。Zineを扱っているイベントやショップによってもなんとなく違いはあって、今回の「東京アートブックフェア」はそれこそアーティストやアーティストの卵といった参加者が多くてイラストや写真のポートフォリオのようなZineがとても多かったし、わたしが以前参加した「TINY」では10〜20代の女の子がtumblrやInstagramを更新する延長線上でつくったような可愛らしいZineを売っていた。
90年代こそ「ライオット・ガールが活動で用いたもの」などのイメージがあったかもしれないが、フェミニズムや社会的・政治的な意見を述べているものがZineだとも限らないし、「Zineにはこういうものが書かれていることが多い」などとはとうてい言い切れない。


Beth Siveyerの「girls get busy」



Zineをつくるにあたってのメリットは、「誰でも、比較的容易に、やろうと思えばすぐにつくることができる」ということだと思う。自分の作品や文章をまとめて、コピー本にすればひとまず完成である。これを雑誌や書籍として発行しようとすると労力もお金もかかってしまうし、何より誰でも簡単にできることではない。Zineならばどんな人であれ思いたったらすぐにフィジカルにすることができる。
デメリットをあげるのならば、Zineの発行には多少コストがかかってしまうことだろうか。印刷所に持っていけば高い費用がかかってしまうし、コンビニ印刷も馬鹿にならない。自宅のプリンターでもいいが機能は限られているし、インク代や紙代もかさむ。部数を増やせばそれだけのお金は必要だし、金額をつけて売るのならなんとかして捌かなければ大赤字である。
それでも作家の多くは、費用は気にしていない。「儲けたいからつくる」なんて考えている人はきっとほとんどいなくて(だってZineはきっとよほどでない限りつくればつくるほど赤字だ)、「つくりたいからつくる」、これに尽きる気がする。そもそも儲けたいなら、きちんと出版社から出したほうがはるかにいいに決まっている。

どちらかというとわたしはコピー本のような、DIY感のあるZineが好きだ。アートブックのようなZineにもほれぼれしてしまうのだが、わたしが欲しい!と思うのは手書きの文字やイラストやステッカーでぎっしりで、それをコピーしてホチキスでとめたようなZineばかりだ(まさにライオット・ガールのFanzineみたいに!)。他人の日記帳をのぞいているような感覚が楽しい。それから、「わたしにもつくれるかもしれない」と思わせるような制作の拙さやアマチュア感にも、おのずと心惹かれているかもしれない。

小中学生のころ流行っていた「交換ノート」や「授業中の手紙」みたいに、たわいもない話題や最近はまってるお菓子や昨日みたテレビの話を書いても、Zineなら許される。そんなルールの緩さもいい。「Zineは参加型メディアだ」とA.ピープマイヤーの本に書かれているが、こうした「シェア」をかたちにしたくなったときの最適の媒体ではないかというのが、今のところの「わたしにとってのZine」である。